BETA

Mixed Realityに対するMicrosoftの功罪

投稿日:2019-02-03
最終更新:2019-02-04

TL;DR

  • 学術的にはMR ⊃ AR, VR
  • MicrosoftはMRという言葉を意図的に「再定義」した
  • 懐古厨がざっくり歴史解説

はじめに

2019年1月現在、MR界隈、特にハードウェアの雄として上がるのはFacebook(Oculus)、HTC(Vive)、そしてMicrosoftだと思います。
特にMicrosoftは、Windows Mixed Realityの開発者/ハードウェアベンダへの公開で、参入ハードルを下げユーザに選択肢を与えてくれています。

特にセンセーショナルだったのがHololensでした。
プレゼン中盤に姿を現したそれは、スタンドアロンでMinecraftを動かし、会場に設置されていたテーブルを認識してオブジェクトの位置関係を同期させました。
そしてこれを境にMRという言葉の意味がずれたように思います。
(恐らくMicrosoftは意図的にやっている)

MRという言葉を紐解く

2019/02現在、MRという言葉を調べると「ARをさらに発展させたのがMRという新しい技術」VRとARの上位版のようなものという説明がされます。
「言葉の意味がずれた」というのが真だとしたら、以前の意味はなんだったのでしょうか。

MRの初出

この単語の出所をたどっていくと、Augmented Reality: A class of displays on the reality-virtuality continuum (Milgram et al, 1994)という文献にたどり着きます。
(2019/02現在で被引用数2000以上のとても有名な論文です。)
ここでは、Reality-Virtuality (RV) continuumという概念を用いてARやVRといった情報提示技術を統一的に扱えるのではないか?という提案をしています。


(画像はResearch Gateから引用)

そして、この文献では画像のように「ARやVRなどを包含する上位クラス」としてMRという単語を使っています。
つまり、元々MRはとても範囲の広い単語であるものの、ARやVRの発展形・上位版といった意味はないがわかります。(javaで言うところのabstract classですかね。)

なお、この研究グループはARの研究をしていたのか画像上にVRの文字は出てきませんが、AVに該当すると考えています。
テレビゲームなどがVirtual Environmentに限りなく近いAV、Virtual Environmentは見てるだけで干渉できないイメージです。

このように言葉としてのMRは出てきていましたが、最近までそれほど知名度がある単語ではありませんでした。
大体のことはARやVRで説明できるので、使う必要がなかったという方が正しいかもしれません。

Microsoftは意図的に意味を曲げて使っているのか

↑の文献から20年ほどして発表されたのがHololensです。
冒頭のように、MR界隈に大きな衝撃を残していますが、MRの意味がずれたのもその衝撃を表すものかもしれません。
これ以降、MicrosoftはHololensを「AR以上の体験ができるもの」と宣伝し、同じSDKが使えるHMDをWindows MR Headsetとして他のベンダから発売しました。
宣伝の内容はそれまでのUXを考えると間違いではないし、HeadsetにVRではなくMRとつけているのもHololensのことを考えると納得できます。

ただ、それを展開していく中で「Hololensが提供するMRはARとは異なる」といった触れ込みをしました (e.g. https://www.youtube.com/watch?v=Ojrr8rrcS5M)。
前述のように、技術的には包含関係であり異なるものではありません。
また、UXとしてはHololensほど一般化しなかったものの、MREALなど性能や満足度の差こそあれどコンセプトは同様の体験をすることは可能でした。

これらが混じり合い、元々のMRの意味とは異なる意味が生まれ、Microsoftは意図的にそれを使っている状況が生まれています。

最後に

古くからMR界隈を知る技術者がいるにも関わらず、敢えてこの使い方をしていることはこれまでの技術や研究をないがしろにしているように思えます。
違う意味を持たせるなら、別の単語を作ってほしかった。

ちなみに、最近の開発者向け記事を見ると単語の使い方を元々の意味に戻しつつありますが、あまりにも範囲が限定的で逆に混乱を招く気がします。
(e.g. http://events.unity3d.jp/unitetokyo2018/interview/microsoft.html, https://www.4gamer.net/games/276/G027669/20171019099/)

Github買収してprivate repository開放したり、MSCodeをフリー化したり、開発者としては最近のMSはありがたいばかりですが、この界隈で研究していたものとしてはどうしても疑問が残ります。

言葉の定義は多数決的に決まるものだと思いますし、MR界隈をMicrosoftが盛り上げてくれたのは紛れもない事実です。
Microsoftが悪い!と言うつもりもないですが、懐古厨としては少しでも多くの人が原義を頭の片隅に置いておいてほしいと思います。

技術ブログをはじめよう Qrunch(クランチ)は、プログラマの技術アプトプットに特化したブログサービスです
駆け出しエンジニアからエキスパートまで全ての方々のアウトプットを歓迎しております!
or 外部アカウントで 登録 / ログイン する
クランチについてもっと詳しく

この記事が掲載されているブログ

@tmyoasの技術ブログ

よく一緒に読まれる記事

0件のコメント

ブログ開設 or ログイン してコメントを送ってみよう
目次をみる
技術ブログをはじめよう Qrunch(クランチ)は、プログラマの技術アプトプットに特化したブログサービスです
or 外部アカウントではじめる
10秒で技術ブログが作れます!